長野県松本市 弁護士 愛川法律事務所 愛川直秀
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〈雑感3〉 日本人のアイデンティティ
〈雑感3〉 日本人のアイデンティティ
 震災前、日本は財政難、政治不信、構造改革の遅れなど処々の理由により、国際的な地位低下が叫ばれ、「ジャパンナッシング」なる語がもてはやされていたように思われます。
 ジャパンナッシング、文字からは、日本の存在が世界において忘れ去られていることを意味するのでしょう。ジャパンアズナンバーワンと叫んでいたバブル期を小学生のうちに過ごした私としては、世間を具体的に認識し出してから、日本は下降の一途を辿ってきました。(そのような報道がほとんどであったために、そう認識してきました。)
 世界における日本の地位は低下し、もはや世界では相手にされていないかのような状況であると私を含めた多くの日本人が思っていたのだと思います。
 ところが、震災後、驚くべき多くの国家、団体、個人の方が、世界中から援助の意思表示を行い、義援金を送付し、具体的な物資を援助してくれています。物だけではなく、人的援助も膨大なものです。
 アメリカでは、NBA(プロバスケットボール)の選手の有志が、ゴール数に応じた援助金を企画してくれたり、未だヨーロッパ中心で成り立っているF1の世界でも、フェラーリが日本を応援するステッカーを貼って支援してくれたりしています。
 日本は世界で忘れられてはいなかったんだ、多くの日本人が思ったはずです。これだけの支援をしてくれるだけの貢献を我々日本人、あるいは先輩方は、世界に対して行ってきたんだと素直に感じました。
 世界における評判を気にしがちな日本人ですが、
 やるだけのことはやってきたんだ、
 世界から忘れられていなかったんだと、
 日本の立ち位置を再確認できるきっかけになったのではないかと思います。
 自らの存在価値をこういう状況になって認識できるスタンスこそ、日本のアイデンティティではないでしょうか。
 再び世界に貢献するためにも、今一人一人ができることを。

〈雑感2〉 国債の大量発行に対する疑問
〈雑感2〉 国債の大量発行に対する疑問
 本年8月に起こった政権交代によって与党となった民主党は、自らの政権公約を実現すべく、大幅な財政出動を想定しています。一方で、世界同時不況と呼ばれる不況を主要因として、大幅な税収不足が指摘されております。
 そのため、政権与党は、収支のギャップを埋めるために、大量の赤字国債を発行しようとしています。国債は、いうまでもなく、国の借金です。いずれ返さなければなりません。最新の情報では、国と地方を合わせた借金総額が871兆円にものぼるそうです。景気浮揚のためには、支出を増大するべきであり、そのための国債発行をためらってはいけない、今つぶれてしまっては元も子もなく、将来のことを言っている場合ではないといった論調があります。たしかに、景気浮揚するためには、国が景気の下支えを行う必要があり、国に金銭的余裕がない現況からは、赤字国債の発行もやむを得ず、景気が回復した時に、国債の償還を行っていけばいいという考え方もできます。
 しかし、赤字国債を発行することと、個人がお金を借りて、事後、返済するということとは、明確に異なる点があります。それは、借金してお金を使う人と、返済する人とが同一ではないということです。国という単位でみると、「国」が借金して「国」が返すということで、同一性が保たれていると見えるかもしれませんが、借金時と返済時とで「国」を構成する国民が全く異なるという事実を忘却してはなりません。赤字国債を発行して、財政規模を拡大し、支出を増大して、景気の下支えを行い、その利益を享受するのは、その時の国民です。
 赤字国債の償還時に返済を行うのは、利益を享受した国民ではなく、返済時の国民なのです。赤字国債の償還年数が長ければ長いほど、利益を享受した国民と返済時の国民との食い違いが大きくなってくるのです。いわば、国債を償還する際の国民は、赤字国債の発行による利益を得ていないにもかかわらず、多額の赤字国債の返済を余儀なくされてしまうということなのです。これでは、国債発行時の国民と償還時の国民との間に、あまりにも不公平な格差が生じてしまいます。景気浮揚、あるいは今つぶれては将来がないといった建前をいかに論じようと、自らの世代のためにお金を使い、次の世代にそのツケを回すことは、世代間での不平等そのものであって、許されるべきものではありません。そうでなくても、現在の社会保障制度は、高齢者に重きを置きすぎ、若年層を軽視しており、世代間格差が生まれているのです。赤字国債の大量発行は、その世代間格差に拍車をかけ、まだ生まれもしていない将来の世代に負担だけを強いるものです。
 赤字国債発行には、現世代と次世代との間の、時間軸上の観点からみた、不平等という問題が潜んでおり、国民は、次世代に何を残すかという観点をもふまえて、議論の行方を注視していかなくてはなりませんし、財政・赤字国債発行に対する憲法上の規制の是非をも議論すべき時ではないでしょうか。

<雑感1> 「正義の積み重ね」
<雑感1> 「正義の積み重ね」
 みなさんは、正義の実現と聞いてどのようなことを思い浮かべますか?
 えん罪事件のような事件を思い浮かべる方も多いと思われます。無罪判決を勝ち取ることは、イメージのしやすい典型的な正義の実現でしょう。圧倒的に不利な立場の刑事被告人・弁護人が、国家権力と対峙し、無罪を勝ち取ることは、並大抵の努力ではありません。
 正義の実現とは、権力との戦いといった典型的なものだけではありません。我々が暮らしている社会においては、どのような小さな問題であっても、正義は存在します。人との約束を守る、人を欺かないといったことも、正義の実現に違いありません。権力との戦いを大きな正義とすれば、いわばこれは小さな正義とでも表現できるでしょう。約束を守る、人を欺かないといった、小さな正義が、いくつも積み重なって、社会が回っています。
 しかし、時として、この小さな正義が守られない場合が出てきます。有名ブランド牛と表示されていたのに、実は真っ赤な嘘だったという事件がありました。この事件は、明らかに正義に反するものと言わざるを得ません。この事件のきっかけも、会社内部での些細なところでの嘘が始まりだったと聞いています。ほんの些細な嘘や正義に反する行為であっても、それが積み重なると社会的に大きな問題になってくるのです。そして、結果的に、関わった会社や個人は、大変な打撃を受け、会社の倒産、代表者の逮捕といった事態を招いてしまうのです。
 「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」(弁護士法第1条第1項)にもあるように、正義の実現を求められております。当事務所は、大きな正義の実現だけでなく、前述の小さな正義を社会の隅々にまで行き渡らせるためのお手伝いができればと考えております。
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